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生体エネルギー機構(40)

[2024.06.24]

皆様こんばんわ!

先週は当院の理学部長の堀本君と痛み✖️理学療法についてのお話を株式会社geneさんのところでさせていただく機会がございました。

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今後、こちらの内容はgeneさんで放送されますが、当院に来院された際には当院でのみ放映を許されているので是非見ていただけたらと思います。

さて、生体エネルギー機構について勉強していきましょう。

 

生体エネルギー

 

まず、生体エネルギー機構を説明するにはATPの理解が必須です。

なぜ必須かというと、人間が筋肉を動かすためのエネルギーには、ATPが利用されるからです。ATPはAdenosine Tri-Phosphate(アデノシン3リン酸)の略で、アデニン、リボース、3つのリン酸から構成されている。ATPから1つのリン酸が離れADP(Adenosine Di-Phosphate:アデノシン2リン酸)に分解されるときに生じるエネルギーを利用し、筋収縮をおこなっています。

ご飯を食べたらそれを人体で使用可能なものに変えることを異化といい、その過程で放出されるのがATPです。逆にそのATPを使用し大きなものを合成するもが同化です。従ってATPはエネルギーそのものと思っていただいてもいいかもしれません。

生体が高分子化合物を低分子化合物に分解する反応が異化反応、すなわち代謝(metabolism)であり、生体が低分子化合物から高分子化合物を合成する反応が同化反応、すなわち生合成(biosynthsis)となります。ここで炭水化物やタンパク質、脂質の3大栄養素が大事になってきます。

 

1. グルコース代謝 炭水化物

グルコースは細胞の主要なエネルギー源であり、代謝経路を通じてATP(アデノシン三リン酸)としてエネルギーが生成されます。主なグルコース代謝経路には以下のものがあります

  • 解糖系(Glycolysis): グルコースがピルビン酸に分解され、ATPとNADHが生成されます。このプロセスは細胞質で行われ、酸素の存在に関わらず進行します。

  • クエン酸回路(TCAサイクル): ピルビン酸はミトコンドリアでアセチルCoAに変換され、さらにクエン酸回路を通じてATP、NADH、FADH2が生成されます。

  • 電子伝達系(Electron Transport Chain): NADHとFADH2がミトコンドリア内膜の電子伝達鎖で酸化され、最終的に酸素と結びついて水を生成しながら大量のATPが生成されます。

2. 脂質代謝

脂質もエネルギー源として利用されます。脂肪酸はβ酸化を通じてアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入りATPが生成されます。

  • β酸化: 長鎖脂肪酸がミトコンドリア内で分解され、アセチルCoAが生成されます。

  • ケトン体生成: エネルギー不足時には肝臓でケトン体が生成され、これが他の組織でエネルギー源として利用されます。

3. タンパク質代謝

タンパク質もエネルギー源として利用されることがあります。アミノ酸は脱アミノ化され、クエン酸回路の中間体に変換されます。

 

では、まずはグルコース代謝から見ていきましょうグルコース代謝は下記の3つの過程を経てエネルギーを生産します。

1. 解糖系(Glycolysis)

2. クエン酸回路(Citric Acid Cycle)

3. 電子伝達系(Electron Transport Chain)

 

解糖系は短時間の激しい運動時にエネルギーを迅速に供給します。酸素が不要で(無酸素状態でも行える)生成物はピルビン酸とATP,NADHです。次にクエン酸回路(Citric Acid Cycle)ですが、解糖系で生成されたピルビン酸がミトコンドリア内でアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入ります。ここでエネルギー担体であるNADHとFADH2が大量に生成され、二酸化炭素が排出されます。代謝の場所はミトコンドリアで行われ酸素を必要とします。最後に電子伝達系ですがクエン酸回路で生成されたNADHとFADH2は、電子伝達系に電子を供給します。電子がミトコンドリア内膜を通過する過程で、プロトン勾配が形成され、大量のATPが合成されます。最終的に、電子は酸素と結合して水を生成します。ミトコンドリアの内膜で行われます。

 

では、ここで運動時について考えてみたいと思います。

運動時のエネルギー供給の種類

次に、運動時のどのようなエネルギー供給機構が動いているのかについて整理しておきましょう。運動時のエネルギー供給は、3つあります。

 

  1. ATP-PCr系: クレアチンリン酸からエネルギーを産生する → 一瞬で無くなる          瞬発系
  2. 解糖系 (無酸素系): 糖質からエネルギーを産生する → 酸素を必要としない           筋持久系
  3. 有酸素系: 脂質からエネルギーを産生する → 酸素を必要とするが、長くエネルギーを供給できる 持久系

 

ATP-PCr系からのエネルギー供給は短時間の運動時に使われます。ただ、供給量は糖質や脂質と比較するとごく少量でクレアチンリン酸の体内貯蔵量は少ないため、一瞬で無くなってしまいます。

そして先に学んだ解糖系は、糖質からエネルギーを産生する機構でした。加えてピルビン酸から乳酸が生じる代謝経路でもあります。エネルギー供給機構として、解糖系がメインとなる競技の例としては、スピードと持久力が合わさった競技になります。大体400m走などが例となります。

有酸素系も先程書きましたが、ピルビン酸や、脂肪が分解し遊離脂肪酸から生成されたアセチルCoAがミトコンドリア内でクエン酸回路に取り込まれ、複雑な過程を経て処理される。その後、電子伝達系に入り、そこで多くのATPが再合成されます。先に挙げた2つのエネルギー供給系と異なり瞬間的なエネルギー供給には不向きである。しかしながらエネルギーの供給量は大きいため、有酸素系のATP産生によって長時間の運動が可能となる。

 

なんとなくですが、運動別に使われる代謝経路が違うということがなんとなくわかってきた気がしますね。

さて、ここまで糖質を使用したエネルギー代謝を学んでまいりましたが、次週はタンパク質と脂質に関しても学んでいこうと思います。

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