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腰痛(ギックリ腰) 2024上半期(1月から6月まで) 疾患別ベスト5 第1位(53)

[2024.09.09]

皆様おはようございます。

これまで、上半期ベスト5をお送りしてきましたが、ついにベスト1の発表です。

圧倒的に2位に大差をつけて1位となっている疾患はズバリ 腰痛

それもそのはず、全国的にみても日本で痛みとして一番多いのは腰痛なのです!

その中でも、当院では脊柱管狭窄症が圧倒的に多いです。

ということで、今回から腰痛のお話を数回に渡りお話ししていこうと思います。

その他の疾患もほぼ全国の順位と同様です

やはり腰、肩、膝は国民病ですね

         当院の疾患ベスト5

では、当院でも圧倒的受診率を誇る腰痛について語っていきたいと思います

腰痛

 

まずは、腰痛といってもぎっくり腰のようにいわば急に生じたものと、急性腰痛をこじらせた、または根本的な病態の違いにより急性腰痛と慢性腰痛に分けられます。

急性腰痛と慢性腰痛は、発症のタイミングや痛みの持続期間、原因などに違いがあります。それぞれの特徴を以下にまとめます。

急性腰痛と慢性腰痛の主な違い

特徴 急性腰痛 慢性腰痛
発症のタイミング 突然発症する。動作や外力により急に起こる。 徐々に進行し、痛みが継続的に続く。
持続期間 数日から数週間で回復することが多い。 3ヶ月以上続く痛み。長期間持続するのが特徴。
原因 筋肉や靭帯の捻挫、ぎっくり腰、椎間板ヘルニアなど、短期的な原因が多い。 姿勢不良、筋力低下、神経損傷、椎間板の劣化、心理的ストレスなど。
痛みの性質 鋭く、突然で激しい痛みが特徴。動けなくなるほどの痛みが起こる。 鈍く、持続的な痛み。時には痛みが増したり減ったりする。
治療 短期的な安静、鎮痛薬、理学療法、神経ブロック、インターベンション治療 長期的な運動療法、姿勢矯正、ストレッチ、心理療法、神経ブロック、インターベンション治療
予後 多くの場合、自然に回復することが多いが、再発することもある。 慢性化すると、治療が難しくなるため長期間の管理が必要。
急性腰痛の特徴

発症: 突然の動作や外的要因によって起こり、典型的にはぎっくり腰や急性の椎間板ヘルニアなどが原因です。重いものを持ち上げたり、急に体をひねったりすると発症します。

痛みの強さ: 急激で鋭い痛みが腰に集中し、動くことが困難になるほどの強い痛みが特徴です。痛みは数日から数週間で自然に緩和することが多いです。

治療: 安静、鎮痛薬、冷却療法などが主な治療法です。短期的に対処するため、回復も比較的早いですが、原因によっては治療が必要です。当院では特に神経ブロックを頻用しますが腰部硬膜外ブロックは最強のブロックです。

慢性腰痛の特徴

発症: 徐々に痛みが増していくことが多く、生活習慣や姿勢、ストレスなどの影響も大きいです。3ヶ月以上痛みが続く場合、慢性腰痛と診断されます。

痛みの強さ: 鈍い痛みや持続的な不快感が腰に感じられることが多く、急性腰痛と比べて鋭さは少ないですが、長期間痛みが続くため生活の質に大きく影響します。

原因: 筋力低下や椎間板の変性、関節の老化、さらには精神的・心理的要因(ストレスやうつ状態)が関与することが多く、特定の原因を見つけにくいこともあります。

治療: 長期的な運動療法、姿勢矯正、筋力強化トレーニング、心理療法、認知行動療法などの包括的な治療が必要です。慢性化すると治療に時間がかかり、痛みのコントロールが難しくなることがあります。

急性腰痛と慢性腰痛の関係

急性腰痛が適切に治療されず、再発を繰り返す場合に慢性腰痛に移行することがあります。また、急性腰痛が長引くと慢性化するリスクも高くなります。そのため、急性腰痛の段階で適切な治療を受け、予防策を講じることが慢性腰痛の発症を防ぐために重要です。

 

では、よく聞くぎっくり腰とは一体何者でしょう?

ぎっくり腰

ぎっくり腰(正式には「急性腰痛症」や「腰椎捻挫」)は、腰の筋肉や靭帯、関節に急激な負担がかかることで発症する、突然の強い腰痛のことを指します。英語では「lumbar sprain」や「acute low back pain」と表現され、日常生活でもよく見られる症状で、いきなりの激痛を生じ初日は動けないという患者様も多くいます。

その時に来ていただくことができれば、硬膜外ブロックなどの神経ブロックの効力を心から感じることができると思いますがなかなか難しいですよね。

ぎっくり腰の特徴

急に腰に激痛が走り、身動きが取れなくなるほどの痛みを感じます。特に、重い物を持ち上げる、急に腰をひねる、無理な姿勢をとるなどの動作が引き金となることが多いです。 痛みは主に腰部に集中しており、体を動かすたびに痛みが増すことが一般的です。通常、下肢に痛みが放散することは少なく、基本的には神経の損傷はありません。足にまで痛みが来るとしたら椎間板ヘルニアなどの疾患の可能性も考えなければなりません。多くの場合、数日から1週間程度で痛みが軽減し、自然に回復します。しかし、痛みが長引く場合や、頻繁に繰り返す場合には、他の原因が疑われることもあります。

ぎっくり腰の原因

ぎっくり腰は明確な特定の病変が原因であることは少なく、過剰な力が腰の筋肉や靭帯に加わることで損傷し、炎症が生じて痛みを引き起こします。また、長時間の座り姿勢や悪い姿勢、無理な動作が腰に負担をかけます。

そして、筋肉の柔軟性や強さが不足していると、腰に負担がかかりやすくなり、過度の疲労やストレスによって、筋肉や関節が硬直し、急な動作でぎっくり腰を発症しやすくなります。

ぎっくり腰の治療法
  1. 安静と姿勢管理: 発症直後は無理をせず安静を保つことが重要です。ただし、長期間の安静は筋力低下を招くため、適度な動作が回復を助けます。腰に負担の少ない姿勢(例えば、膝を曲げて仰向けに寝る姿勢)が推奨されます。

  2. 冷やす・温める:

    発症直後(24~48時間)は、冷やして炎症を抑えることが効果的です。氷嚢や冷湿布などを使用します。炎症が落ち着いた後は、温めて血流を促進し、筋肉の緊張を和らげます。温湿布やお風呂での温熱療法が有効です。
  3. 鎮痛薬: 痛みが強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩剤が処方されることがあります。市販の痛み止めも効果があります。

  4. 理学療法: 痛みが軽減したら、理学療法によるストレッチや軽い筋力トレーニングを行うことで再発を防ぎます。腰を支える筋肉(腹筋や背筋)を強化することが重要です。

  5. 神経ブロック注射: 非常に痛みが強い場合、神経ブロック注射を用いることもあります。これは、痛みを感じている神経を一時的に遮断し、痛みを和らげます。先にも書いたように腰部硬膜外ブロックはとても効果的ですが、痛みの発痛部位が明確であればその場所に行うこともあります。つまり、椎間関節であれば椎間関節ブロック、筋肉であれば筋肉へトリガーポイントという感じですね。

ぎっくり腰は再発しやすいため、発症後も適切なケアと予防が重要です。急性期を過ぎたら、適度に体を動かし、日常生活での姿勢や動作に注意することが大切です。

セルフエクササイズについてはまた別の機会にお話しするとして、このまま腰痛を深掘りして行きましょう。

当院では腰痛の中でも脊柱管狭窄症が大半を占めておりますがその理由は簡単です。

ご高齢の方が多いから

です脊柱管狭窄、すなわち脊柱管が狭くなる病態は加齢による変化が大半です

では脊柱管は一体どこかというと、脊柱(背骨)の中を通っている管状の空間で、脊髄や神経根が通る重要な部分です。脊柱管は、脊柱の骨である椎骨が積み重なってできており、体を支える役割と、脊髄を保護する役割の両方を果たしています。

脊柱管の構造

脊柱は、頭から骨盤まで続く一連の骨(椎骨)で構成されており、その中心には脊柱管という空間があります。この脊柱管の中には、次の重要な構造が収まっています:

  • 脊髄: 脳から伸びる神経の束で、脳からの指令を全身に伝える役割を持っています。
  • 神経根: 脊髄から分岐し、体の各部分に伸びていく神経です。各椎骨の間から神経根が出て、身体の各部位に信号を送っています。

脊柱管の位置

  • 脊椎は、首から腰まで続く骨で、7つの頚椎(けいつい)、12の胸椎(きょうつい)、5つの腰椎(ようつい)から構成されています。これらの骨の中央に空間があり、それが脊柱管です。
  • 脊柱管は、各椎骨がアーチ状に重なり合ってできる空間で、脊髄や神経根を守っています。

脊柱管の役割

  • 脊髄の保護: 脳と体をつなぐ重要な神経である脊髄を外部からの衝撃や圧力から守る役割を担っています。
  • 神経の通り道: 脊髄や神経根が脊柱管を通って、身体の各部位に神経信号を伝えるルートとして機能しています。

脊柱管狭窄症の問題

脊柱管が何らかの理由で狭くなり(骨の変形や靭帯の肥厚、椎間板の膨隆など)、脊髄や神経根が圧迫されると、脊柱管狭窄症になります。この状態では、腰や足に痛みやしびれ、筋力低下が生じます。

脊柱管は背骨の一部であり、身体の重要な神経構造を保護する役割を持つため、その狭窄が問題を引き起こす原因となります。

 

 

 

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されることで痛みやしびれを引き起こす疾患です。特に高齢者に多く、腰部や下肢の痛み、しびれ、歩行障害などの症状が特徴です。この疾患の治療方法には、保存療法と手術療法の2つの主なアプローチがあります。患者の状態や症状の重さに応じて、段階的な治療が行われます。

1. 保存療法(非手術的治療)

軽度から中程度の脊柱管狭窄症や、手術を避けたい場合には保存療法が第一選択となります。保存療法には以下のようなものがあります。

薬物療法
  • 鎮痛薬: 痛みを緩和するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが使用されます。
  • 筋弛緩薬: 筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
  • 神経障害性疼痛薬: 神経の圧迫による痛みやしびれが強い場合、プレガバリンやガバペンチンなどの神経障害性疼痛に特化した薬が処方されます。
  • ステロイド薬: 炎症を強力に抑制し、痛みの緩和に寄与します。飲み薬として処方されるか、神経ブロック注射の一環として使用されることがあります。
 理学療法(リハビリテーション)

理学療法は、脊柱管狭窄症の症状改善において非常に重要な治療です。

  • 筋力強化エクササイズ: 腹筋や背筋を鍛えることで、脊椎をサポートし、腰への負担を軽減します。
  • ストレッチ: 柔軟性を向上させ、神経の圧迫を緩和するために、腰や太もも、ふくらはぎのストレッチが行われます。
  • 姿勢改善: 日常生活での正しい姿勢を習慣づけることで、腰部への負荷を減らし、症状を緩和します。
  • 腰部の牽引: 腰椎を牽引することで、脊柱管の圧迫を一時的に軽減し、痛みを和らげる効果が期待されます。
神経ブロック、インターベンション治療
  • 神経ブロック:仙骨硬膜外ブロックは仙骨裂孔から当院では20mlの生理食塩水を入れます この時に痛み部位に痛みが生じると再現痛として当院では治療に対する今後の効果が望めると考えて次のインターベンション治療へと進みます。腰部硬膜外ブロック:は脊柱管狭窄症に伴う強い痛みに対して、硬膜外腔に局所麻酔薬やステロイドを注射し、炎症を抑え、痛みを緩和します。これは一時的な痛みのコントロールに非常に有効です。神経根ブロックは圧迫された神経根に直接薬を注入することで、痛みやしびれを軽減します。神経根が特定できる場合に行われます。
  • インターベンション治療:ラッツカテーテルというカテーテル治療を当院では推奨しています。こちらの詳しい情報はブログN09をご覧ください。https://mishima-itami.com/blog/%e3%83%96%e3%83%ad%e3%82%b0-%ef%bc%99%e3%80%80%e7%89%b9%e6%ae%8a%e6%b2%bb%e7%99%82%e3%80%80%e3%81%9d%e3%81%ae%ef%bc%93%e7%a1%ac%e8%86%9c%e5%a4%96%e8%85%94%e7%99%92%e7%9d%80%e5%89%a5%e9%9b%a2%e8%a1%93

 

装具療法
  • コルセットや腰椎サポート: コルセットなどの装具を使用して腰を固定し、安定性を高めることで、脊柱管への負担を軽減します。特に急性症状がある場合に一時的に使用されます。

 

 

2. 手術療法 当院では行いませんが、適切な先生と病院をご紹介いたします

保存療法で症状が改善しない場合や、神経障害が進行して歩行困難や排尿障害などの重篤な症状が出る場合、手術療法が検討されます。手術は圧迫されている神経を解放し、症状を改善することが目的です。

a. 除圧術

脊柱管狭窄症に対して最も一般的に行われる手術です。圧迫された神経を解放するために、脊椎の一部を切除します。

  • 椎弓切除術: 脊椎の後方部分(椎弓)を一部切除して、神経を解放する手術です。最も一般的な除圧手術で、圧迫された脊柱管の狭窄部分を広げます。
  • 椎間板摘出術: 椎間板が突出して神経を圧迫している場合、それを取り除く手術です。
b. 脊椎固定術

脊柱管狭窄症に加え、脊椎の不安定性がある場合には、脊椎固定術が行われます。これは、脊椎の動きを制限し、安定化する手術です。

  • インストゥルメンテーション(金属固定具)を使用: 金属プレートやスクリューを使用して脊椎を固定し、不安定な部分を支えます。
  • 椎間固定術: 椎間板の代わりにスペーサーを挿入し、脊椎を安定化させます。
c. 最小侵襲手術

近年では、患者の負担を軽減するために最小侵襲(ミニマリズム)の手術が増えています。これにより、回復が早く、合併症のリスクも低減されます。

  • 内視鏡手術: 小さな切開で内視鏡を挿入し、神経の圧迫を解消する手術です。傷が小さく、回復が早いのが特徴です。
  • 経皮的除圧術: 経皮的に器具を挿入して神経を解放する手術法で、従来の手術よりも侵襲が少ないです。
3. その他の治療
a. 神経刺激療法(脊髄刺激)

薬物療法や手術療法が効果的でない場合、脊髄刺激療法が行われることがあります。これは、電極を脊椎に挿入し、弱い電流を流して痛みを抑える方法です。

b. 再生医療

近年では、再生医療を用いた治療法も試みられています。幹細胞治療や再生誘導因子を使用して、損傷した組織を修復し、神経の再生を促進する治療が研究されています。

 

次回は椎間板ヘルニアに対しての様々な治療方法をご紹介いたします。

 

 

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