超音波の使用方法 その1〜神経ブロック〜
皆さんおはようございます。
昨日はこちらに家族で遊びに行って参りました。
静岡の魅力をより多くの人に伝えて、地域の活性化を目的としたイベント「静岡フェス」が土日の2日間に渡り開催されていました。今回が第1回目ということでグルメ✖️スポーツ✖️ステージがテーマで大盛り上がりでした!当クリニックもちゃっかりと協賛させていただきました。ありがとうございます^^
さて、
神経ブロックは主に手術麻酔で使われる技術ですが、ペインクリニックではそれを外来に応用しています。今回は神経ブロックとハイドロリリースの違いはあまり触れず(超音波と透視との違いを説明していくので)多くは語りませんが、少しだけ説明を加えておきます。
神経ブロックとハイドロリリースとの大きな違いは下記の表の通りです。
神経ブロックは薬理的に作用して、ハイドロリリースは物理的に作用します。ちょっと、何を言っているかわからないかと思いますので、腕神経叢ブロックやリリースを例にしてお話ししますね。
腕神経叢ブロック(Brachial Plexus Block)について
腕神経叢ブロックは、腕や肩の痛みの管理や手術時の麻酔として広く用いられる神経ブロック技術です。特にペインクリニックでは、慢性的な痛みの緩和や可動域改善の目的で使用されることが多く、胸郭出口症候群(TOS) や サイレントマニピュレーション(肩関節受動術) での適応もあります。超音波のない時代は透視で行われていました。
1. 腕神経叢ブロックの概要
(1) 腕神経叢とは?
腕神経叢(brachial plexus)は、頸髄(C5~C8)と胸髄(T1)の神経根が合流して形成される神経の束で、肩から腕、手にかけての感覚と運動を司ります。
黒丸が神経です
これだけはっきり神経が見えるんです。なので安全に確実に手技が行えるというわけです!
(2) 主要なブロックの方法
腕神経叢ブロックには、針を刺す位置によっていくつかの種類があります。基本的に手術の麻酔で使用しますが、これらを応用して外来では胸郭出口症候群いわゆるTOSに使用しています。
ブロックの種類 | 適応部位 | 特徴 |
---|---|---|
斜角筋間ブロック (Interscalene Block) | 肩関節・上腕 | 肩関節手術やサイレントマニュピュレーションで使用 |
鎖骨上ブロック (Supraclavicular Block) | 上肢全体 | 上肢の広範囲な麻酔に有効で、鎖骨下動脈近くでの施行が必要 |
鎖骨下ブロック (Infraclavicular Block) | 肘~手 | 肘や前腕、手の手術に適用され、持続カテーテル留置も可能 |
腋窩ブロック (Axillary Block) | 前腕・手 | 手の外科手術に適応されるが、上腕の麻酔には不向き |
ペインクリニックでは主に
上位交差症候群、つまり姿勢が悪いことによる神経の圧排。その姿勢改善や神経周囲の絞扼を取るために使用します。
胸郭出口症候群(TOS)として神経の痺れが出てきたらこの姿勢要注意です
私は神経ブロックというよりもハイドロリリースとして行うことが多いので、滅多に局所麻酔は使いませんが、行う位置は神経ブロックの位置とほぼ同じです。
一般的に上位交差症候群のように、姿勢が悪くなりTOSを生じている方は緊張している筋肉を緩めて、弛緩している筋肉を鍛えることが重要です。筋肉の硬さを取るにはハイドロリリースで筋肉内または筋肉と筋肉の間をリリースしたりするの方が効果的であると思ってます。
局所麻酔を使用した方法だともちろん筋肉弛緩は得られますが、何に聞いているか曖昧になってしまうという欠点と量を多く使えないということが難点です。
2. ペインクリニックにおける適応
(1) 胸郭出口症候群(TOS)
TOSとは?
胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome) は、鎖骨周辺で腕神経叢が圧迫されることで、肩や腕に痛みやしびれを引き起こす疾患です。
主な原因:
- 斜角筋の過緊張(斜角筋症候群)
- 鎖骨と第一肋骨の狭小化(肋鎖症候群)
- 小胸筋下の圧迫(過外転症候群)
TOSに対する腕神経叢ブロック(リリース)の効果
✅ 斜角筋間ブロックが有効
→ 斜角筋の緊張を緩和し、神経の圧迫を軽減できる。
✅ 痛みの軽減と血流改善
→ 交感神経の遮断作用により、疼痛が緩和し、血流が改善される。
✅ リハビリとの併用が可能
→ 一時的に症状を和らげることで、運動療法やストレッチをより効果的に行える。
局所麻酔では神経を狙うこともありますが、当院ではまずはハイドロリリースが主です。
👉 特に、慢性的なTOS患者で筋緊張が強い場合に注射でハイドロリリースを行いを繰り返しその都度リハビリを行うことで改善が期待される。
つまりは姿勢が大事ということなのです
(2) サイレントマニピュレーション(Silent Manipulation)
サイレントマニピュレーションとは?
サイレントマニピュレーションは、肩関節の拘縮(特に凍結肩・五十肩)に対して、腕神経叢ブロックを用いて受動的に関節可動域を広げる治療法です。
この場合にはリリースでは効果がないので神経ブロックを確実に腕神経叢に利かせなければ手技自体が成り立ちません。つまり、腕神経叢へ確実に局所麻酔を投与することが必須になります。
腕神経叢ブロックの役割
✅ 痛みを抑えてスムーズな可動域拡大が可能
→ 神経ブロックによって関節包の痛みを感じなくさせ、受動的な動きを許容できるようにします。筋弛緩作用のため力が全く入らなくなります。(3.4時間で回復します)
✅ 麻酔なしの手技に比べて安全性が高い
→ 患者が無理な力に抵抗しないため、関節への負担が軽減されます。
👉 特に、痛みが強く可動域訓練が困難な患者に適応されます。
施術中はバリバリと音がするため皆さんびっくりされますが、関節包の硬さはサイレントマニピュレーションをするしかありません!
3. 超音波ガイドと透視ガイドの使い分け
腕神経叢ブロックは、超音波(USG) または 透視(Fluoroscopy) を用いてガイドすることが一般的です。
ガイド方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
超音波ガイド(USG) | ✅ 神経や血管をリアルタイムに描出できる ✅ 透視が不要なため、放射線被ばくがない ✅ 軟部組織の状態を確認可能 |
❌ 骨構造の視認が難しい ❌ 施行者の技術による影響が大きい |
透視ガイド(Fluoroscopy) | ✅ 骨構造を基準にしたブロックが可能 ✅ 造影剤を使用し、薬液の拡散を確認できる |
❌ 軟部組織の観察ができない ❌ 放射線被ばくのリスクがある |
👉 当院では、リアルタイムに神経を描出できる超音波ガイドが主流となっていますが、透視でしかできない方法もあるため透視も絶対に必要だと思っております。
というように腕神経ブロックを1つ取っても多様な使い方があるわけですねー
次回は超音波の神経ブロック以外の使い方についてお話しします。