気象病 ~梅雨の時期は痛みが増悪~
梅雨になると痛みが増す? ― 気圧と体のふしぎな関係 ―
おはようございます。みしま痛み&リハビリクリニックの院長の寺田です。
めでたいことに当院の下山くんが新しくパパになり、西川くんがご結婚されました。今週末はそのお祝いで理学部で集まり盛大に美味しいご飯を振舞ってもらいました。
下山くん、西川くん改めておめでとうございます!
そして!エスパルスの応援に行ってきました!ピッチサイドまで入れる機会があってテンションマックスでした!
さて、楽しい週末も終わり気分が高鳴る一方でだんだんと梅雨入りし、予定していたゴルフなどのイベントごとがなくなってしまうのは気分が沈みますよね。
もちろん、普通にイベントがなくなるのは残念ですが、梅雨に季節に気分が落ち込んだり痛みが出たりするのにはちゃんとした理由があるのです。
当院にも気圧の関係で
皆様もよく梅雨の時期は不調を訴え得られます。
「梅雨になると関節が痛む気がするんです」
「雨の日は頭痛や肩こりがひどくなります」
という声です。
実はこれ、けっして気のせいではありません。
梅雨はなぜ体調が崩れやすいの?
梅雨時は、雨が続き気圧が低くなりがちです。
「気圧」とは空気の重さのこと。ふだんは気にしていませんが、この気圧の変化が私たちの体にじわじわと影響を与えているのです。
低気圧が続くと…
・体の中の組織や関節にかかる圧力が変わる
・自律神経(体を整える神経)が乱れやすくなる
・血流が悪くなり、老廃物がたまりやすくなる
といった変化が起こり、結果として「痛み」や「だるさ」につながると考えられています。
「気象病って本当にあるんですか?」
「医学的な証拠はあるんでしょうか?」
こうした疑問もよく聞かれます。
実は、気象病については国内外でさまざまな研究が進んでおり、一定の科学的根拠が示されています。
① 痛みと気圧の関係
とくに有名なのが 「気圧低下と痛みの増悪」に関する研究 です。
例えば:
・慢性腰痛患者を対象とした日本の研究(2014年)
→ 低気圧が接近する数日前から痛みが増強する例が多いことが確認されました。
(参考:日本気象学会誌ほか)
・英国マンチェスター大学の「Cloudy with a Chance of Pain」研究(2019年)
→ 約1万人の慢性痛患者がスマホアプリで痛みと気象データを記録。
→ 「低気圧・高湿度・低気温」が痛み増悪と有意に相関していたことが発表されています。
(BMJ Open誌などに掲載)
これらの結果から、気圧変化が神経や血管・組織に影響し、痛み感受性を高めることが示唆されています。
② 自律神経の影響
また、低気圧により自律神経系(交感神経・副交感神経)のバランスが乱れやすくなることも、いくつかの研究で報告されています。
・交感神経の過剰な緊張 → 筋緊張・血流低下 → 頭痛・肩こり
・副交感神経の過活動 → めまい・ふらつき・倦怠感
このようなメカニズムが「気象病」の多様な症状に関与していると考えられています。
③ 耳(内耳)の気圧センサー仮説
さらに近年注目されているのが、内耳(耳の奥)が気圧変化を感じ取り、自律神経や痛みと関係しているという説です。
・愛知医科大学の佐藤純 教授らの研究では、内耳の気圧センサー機能と気象病症状の関連が報告されています。
・内耳の圧受容器が敏感な方ほど、気象病症状が出やすい傾向があるという興味深い知見です。
関連する疾患(代表例)
疾患名 | 気象病との関係 |
---|---|
片頭痛 | 低気圧時に増悪しやすい |
関節リウマチ | 湿気や寒さで痛み悪化 |
線維筋痛症 | 気温や湿度の変化で痛みが増す |
メニエール病 | 気圧変化で症状増悪 |
帯状疱疹後神経痛 | 気圧変化による悪化例あり |
🩺 対処法・治療法
1. 生活習慣の改善
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十分な睡眠
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規則正しい生活
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適度な運動(特にウォーキングやストレッチ)
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湯船にゆっくり浸かる(自律神経の安定に有効)
2. 内服薬の使用
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鎮痛薬(ロキソニン、カロナールなど)
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片頭痛薬(トリプタン系)
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漢方薬(苓桂朮甘湯、五苓散など)
3. 気圧変化への対策
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耳栓型の気圧調整アイテム(気圧グッズ)の使用
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気象病アプリなどで天候を事前に把握し、予防的に対応
ペインクリニックの視点からの対策
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星状神経節ブロック(SGB)、スーパーライザー:交感神経の緊張を和らげ、自律神経バランスを整える。
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高気圧酸素療法:特定の疾患に適応あり。
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漢方治療:患者の体質に合わせた処方。
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心理的サポート:気象病による不安・抑うつへの認知行動療法的アプローチも有効。
📘 補足:気象病を扱った文献や研究
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藤本幸弘『天気痛』講談社(2013):日本での気象病啓発の先駆的著作。
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Recent research on weather sensitivity and barometric pressure changes in Journal of Headache and Pain など。
WHO分類との位置づけ
現時点で「気象病」という病名は国際的な診断基準(ICD-11やWHO分類)には正式収載はされていませんが、
「気象因子による身体症状増悪(weather-sensitive symptoms)」という形で研究分野として確立されつつあります。
また、日本では「天気痛」「気象痛」という言い方も普及してきており、学会・研究会の活動も活発化しています。