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保険診療と自由診療──変わりゆく医療のかたち

[2025.10.13]

私たちが普段受けている医療には、「保険診療」と「自由診療」という2つの仕組みがあります。
健康保険証を使って受けられるのが保険診療。風邪の診察や、腰痛での神経ブロック注射、血液検査など、一般的な治療の多くがこれにあたります。
一方、保険を使わずに行う治療を「自由診療」といい、再生医療や自費リハビリ、疲労回復の点滴など、保険ではカバーしきれない治療を受けることができます。

🔹いま、保険診療の現場で起きていること

近年、医療の現場は非常に厳しい状況に置かれています。
材料費、光熱費、人件費は軒並み上がっているのに、診療報酬(=保険で定められた医療行為の点数)はほとんど上がりません。
むしろ一部は引き下げられ、努力しても報酬が減ってしまうという逆風が続いています。

特に2024年以降は物価上昇や人件費アップが顕著で、スタッフの給与改善も求められています。
しかし、診療報酬の改定だけではこのコスト高を吸収しきれず、
「丁寧に時間をかけるほど赤字になる」という構造的な問題が、全国のクリニックで深刻化しています。

ペインクリニック領域でも同じです。
神経ブロックや点滴治療など、多くの治療が保険で行えますが、使用できる薬や部位には細かな制限があります。
たとえば「この薬剤は適応外」「この注射は算定できない」といった制約の中で、患者さんの痛みに最適な治療を提供するのは簡単ではありません。

🔹自由診療が生まれる背景

こうした中で注目されているのが、自由診療です。
保険ではまだ認められていないけれど、科学的根拠があり、痛みの改善に役立つ可能性がある治療を
「保険とは別枠で」提供する仕組みです。

たとえば、慢性痛に対するPRP療法、ハイドロリリース、プロロセラピー(グルコース注射)、動注療法
あるいは保険期間が終わった後のリハビリ延長などがその代表です。
これらは保険ではカバーできない“もう一歩踏み込んだ治療”として、選択肢を広げる役割を担っています。

もちろん、自由診療は万能ではありません。
費用が高くなりやすいこと、効果に個人差があること、
そして十分な説明と同意が欠かせないこと――これらは大切な前提です。
私たちは、治療の効果やリスク、費用を丁寧にお伝えし、患者さんと一緒に最適な選択を考えています。

 

保険診療と自由診療──日本の医療保険の「いい面・悪い面」も含めて

「保険診療」と「自由診療」――この2つの違いは、実は“日本の医療保険制度そのものの長所・短所”を映し出しています。痛みの医療(ペインクリニック)を例に、できるだけやさしく整理してみます。


1. 日本の公的医療保険の“いい面”(強み)

① だれでも入れる・いつでも受診できる
日本では基本的に全員が公的医療保険に加入します。紹介状がなくても受診でき、急な症状でも受け皿がある――これは世界的に見ても大きな安心材料です。

② 自己負担が1〜3割に抑えられる
保険診療の自己負担は原則1〜3割。さらに高額療養費制度で上限が定められているため、重い病気や長期治療でも“破産を防ぐ安全網”が働きます。

③ 全国どこでも同じルール
診療報酬という“公定価格”で医療行為が細かく定められ、地域や病院で極端に値段が違うといった不公平が起こりにくい仕組みです。

④ 標準治療の普及
有効性・安全性が確立した治療が、広く、適正な価格で行き渡るよう設計されています。ペインクリニックでも多くの神経ブロック、画像検査、リハビリが保険内で受けられます。


2. 日本の公的医療保険の“悪い面”(限界)

① 価格は国が決める=“丁寧な医療ほど赤字になりやすい”場面
公定価格は数年ごとに見直されますが、材料費・人件費・光熱費の高騰を丸ごと吸収できるほど上がりません。時間と手間をかけるほど採算が悪化する領域が残り、医療者の疲弊につながります。

② 迅速なイノベーション導入が難しい
エビデンスがあっても、保険収載までに時間がかかります。たとえばPRPなど再生医療や、新しい評価法・リハビリ技法は、保険が追いつくまで“自由診療”での提供になりがちです。

③ 同日に同部位での“混合診療”が原則NG
保険と自由を同じ疾患で同時併用できません。たとえば同日の同部位に「保険ブロック+自費注射」は不可。制度趣旨としては公平性を守るためですが、患者さんの選択肢を狭める面もあります。

④ 現場の手間=書類・算定ルールの複雑さ
保険適用の範囲や算定要件が複雑で、現場は「診療そのもの」以外の事務的負担が増えがち。結果として時間が奪われ、患者さんと向き合う時間が圧迫されます。

⑤ 医療スタッフの処遇と人手不足
長年の“低価格の積み重ね”は、人材確保・教育投資の足かせにもなります。地方では特に、医師・看護師・リハ職の不足が顕著で、受診機会の格差を生みやすいのが課題です。

 

自由診療は当院では重要な位置付けですが、保険診療で行えることができれば患者様の懐は傷まないはずです。でも、このようにどうしても自由診療でなければできない治療があることも確かなことです。

今後も、保険診療、自由診療ともに患者様のお役に立てるように常に最新の情報と技術を磨いてまいります!

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